『中国武術と共に三十年』写真集出版に寄せて
国際武術技術委員会 副主任
アジア武術技術委員会  主任
中 国 武 術 協 会    副主席
北  京  市  政  協  委  員
北  京  武  術  院  院  長
呉 彬
 このたび、孫建明氏が『中國武術と共に三十年』と題し写真集を出版されたことは誠に欣快にたえない。
 孫建明氏は幼い頃から武術に深い関心を持ち、北京の中国武術専門学校において私の許で熱心に武術の修練に励んだ。その後、北京武術隊の一員として選抜され、さらに深く厳しく中国武術のプロとしての修行を重ねた。
 孫氏は稀に見る努力家であり、北京武術隊の隊長を務めると共に、「北京における若き太極拳家」として、日本で発行された「中国太極拳」の解説書にも17歳の時の孫氏が紹介されている。
 想えば、1974年9月に中国少年武術代表団の一員として初めて訪日した孫氏は、日本において、青少年を始め多くの人々が中国武術や太極拳に大きな関心と興味を寄せていることを知り、深い感銘を受けた様子である。それから十数年後、孫氏は中国武術コーチとして再び訪日し、十数年近くにわたり、中日両国武術愛好者間の緊密な交流の架け橋として活躍をしてこられた。
 この写真集を通して、少年時代の孫建明氏を懐かしく思い浮かべると共に、北京武術隊のチームメイトと共に練習をし、生活をし、そして学習をしながら技を磨き、成長を遂げてきた往時に想いを馳せるものである。また、中国武術が世界各国に普及するに従い、孫氏は世界各国との交流の場においても重要な役割を担って来られた事実も、この写真集に載っている種々の賞状や教え子たちの成績などから伺い知ることができる。
 中国人民と世界各国の人々との一体となった努力により、今年6月には国際武術連合会がオリンピック委員会で正式に会員として認定された。これは、日本武術太極拳連盟の協力があってこそ成しえた業績である。武術はスポーツの一競技種目ではあるが、最も重要な側面は、青少年だけではなく老若男女が身体と共に精神をも鍛えるという点である。
 孫建明氏が今後益々の研讃を積まれ、武術の極意をきわめて大成されることを願って祝辞とする。

                                    1999年10月