復刻本の作成に当って

 祖父「今井清太郎」を偲ぶ唯一の印刷物が亡父「今井圭介」の手許に残っていた。

限られた仲間たちの間で数少ない部数しか製本されなかったらしく、圭介の兄弟達のところにも、そして恐らくは清太郎が勤務した興譲館高校(現)にもこれは残されていないものと思える。現物は緑色の紐で二ヶ所を綴じた手作りのものであるが、その中身は清太郎の人柄や教え子達に与えた感化の大きさを偲ばせるに余りあるものである。

数え年三十九歳でこの世を去った清太郎の丁度二倍の年齢に達した小生がこの書に接するとき、ただ馬齢を重ねた我が身の未熟さを心から恥じると共に、たった一部残されたこの追悼文集を復刻したいと強く思い立つに至った。せめて清太郎に縁のある者達や、清太郎が精根を傾けて舎監の職を全うした勤務先・米沢興譲館高校(現)にも本書を配布したいと考えた。

この小冊子が皆様方の心に訴える何ものかを持ち得る、と信ずるからでもある。

本冊子原本が作成された今を遡る九十三年前(一九一〇年・明治四十三年)当時に思いを馳せながら。

                      二〇〇三年春

         清太郎

         孫  今井 哲二